IT'S ONLY ROCK'N ROLL  
12/25 Zepp Tokyo
木村カエラ × ストレイテナー
 
 12月25日、クリスマス。聖なる夜をロマンティックに過ごそうとする恋人たちでZEPP TOKYOのあるお台場は賑わっていた。ZEPPの真横にある観覧車の入り口には“2時間”と待ち時間を知らせるボードが立ててある。それを横目にZEPP内に入ると、外の恋人たちにまったく負けない音楽を求める超満員の熱気が開演前から立ち籠めていた。

 2008年、数々の“夢の対バン”を実現させてきた『HOT STUFF PROMOTION 30th ANNIVERSARY』。今回は『Emotional Rescue』と題し、木村カエラとストレイテナーというこれまた豪華かつありそうでなかった組み合わせが実現。イベント・タイトル『Emotional Rescue』の元ネタは、1980年にリリースされたローリング・ストーンズの実験性に富んだ傑作アルバムのタイトルだ。よって、開演前のステージにはストーンズのライヴ映像が映し出されていて、お客さんのテンションをさらに高めていた。やがて映像がフェードアウトして、場内が暗転する。バンドの登場を知らせるバトルスの「SZ2」が流れ出すと同時に、割れんばかりの大歓声が上がる。まずは、ストレイテナーだ。

 完全無欠。10月にギターの大山純を新たなメンバーに迎えた現在のストレイテナーには、そんな言葉がよく似合う。1曲目「Black Hole」からバンドの集中力はすさまじく、幻想的なムードのなかで空間が破裂を繰り返すようなナカヤマシンペイが叩きつけるビートとそれ自体がひとつのロック・ストーリーを生むような日向秀和が紡ぐベース・ライン、重厚感に富んだホリエアツシと大山純のギター・アンサンブル、そしてこの強烈なサウンドに屈することのないタフなホリエのヴォーカルが重なりあいながら、すべてのお客さんの感情をステージに引き寄せる。そのままディスコ・ビートとブリブリのベースによって誰もが踊らずにはいられない「DISCOGRAPHY」へとつながれ、会場は“オイオイコール”が響くダンス・フロアと化した。それから一転して、3曲目「SIX DAY WONDER」ではホリエが鍵盤を弾き語り、タイムリーな冬の気配をそこはかとなく感じるリリカルなピアノ・ロック的世界観で聴かせる。ここでも大山のギターが加わったことによるサウンドの豊かな広がりを存分に感じることができた。中盤過ぎ、現時点の最新曲「Little Miss Weekend」ではロックの最新形を提示するようなサウンドスケープを生み、終盤「ETERNAL」「Melodic Storm」「TRAIN」の流れは、歌としての強さ、普遍性も兼ね備えたアンセムの連続といった趣をもって駆け抜けた。まさに、疾走。そして、圧巻。会場の鳴り止まない拍手が、このライヴのすばらしさを雄弁に物語っていた。

 木村カエラがステージに現れると、凛としたその佇まいに思わずハッとさせられる。それは彼女が発する揺るぎない自信によるものなのだろうか。静と動のコントラストが印象的な1曲目「Circle」で伸びやかなヴォーカルを響かせ、続く「マスタッシュ」「BEAT」では自らギターをかき鳴らす木村カエラは、とても大きく見えた。実際は小柄な彼女が、ステージに立ち唄い、踊り、ギターを弾くと会場中をその凛とした存在感で包み込むように大きく見える。紛れもなくこれは、ロックの魔法なのだと思う。彼女はその魔法に自らの感性のすべてを捧げている。だから、木村カエラのロックは眩しいほどに強く、美しい。「切ない曲です」と紹介された新曲「どこ」はセンチメンタルなアコギのリフと流麗なシンセが胸を締めつけるような色合いを浮かび上がらせるミディアム・バラードなのだが、こういった大切な人との別れが描かれた曲でも木村カエラが唄うと必ず光を感じ取ることができる。その一方で「リルラ リルハ」や「STARs」などのオープン・マインドな楽曲では、“ポップ・クィーン”という言葉が脳裏に浮かぶような軽やかさでお客さんを盛り上げる。どんなタイプの曲でも、どんなにステージ上を動き回っても彼女のヴォーカルはその温度を下げることがなく、一つひとつの言葉をはっきり聴き取ることができる。つまり、何かに流されたり、惑わされたりすることなく彼女がライヴのすべてをコントロールしているのだ。最早、貫禄さえ感じた。アンコールではカエラが「メリークリスマス!ってみんなで叫んでみて。聞きたい!」とお客さんにリクエストし、期待どおりの大きな「メリークリスマス!」がZEPPに響いた。カエラは最高に幸せそうな笑顔を浮かべながらそのままラストの「Magic Music」へ。木村カエラが唄い、鳴らす魔法の音楽。それは彼女自身と同じ分だけ聴く者を幸福にする。

 終演後。いまだ恋人たちで賑わう観覧車の前でライヴの興奮覚めやらぬ2人の女の子の会話が聞こえてきた。 「こんな最高のクリスマスは人生初なんだけど!」 「テナーとカエラ、マジでありがとうだよね」


ストレイテナー
  1. Black Hole
  2. DISCOGRAPHY
  3. SIX DAY WONDER
  4. 泳ぐ鳥
  5. Dead Head Beat
  6. ALIBI
  7. BERSERKER TUNE
  8. KILLER TUNE [ Natural Born Killer Tune Mix ]
  9. Little Miss Weekend
  10. MARCH
  11. ETERNAL
  12. Melodic Storm
  13. TRAIN
木村カエラ
  1. Circle
  2. マスタッシュ
  3. BEAT
  4. どこ
  5. You
  6. リルラ リルハ
  7. STARs
  8. 1115
  9. TREE CLIMBERS
  10. Yellow

 en1.Jasper
 en2.Magic Music

text:三宅正一  photo:松本誠司