Take the "A" Train  
2009/2/26 恵比寿ザ・ガーデンホール
クレイジーケンバンド/ピンキーとキラーズ/リリー・フランキー
 
「僕が一番年下というイベントも、なかなかないですよ。お客さんも含めてね」  
 ステージに登場したリリー・フランキー(45歳)がやわらかなトーンで話し始めると、客席は落ち着いた笑いに包まれる。おそらく、普段はライヴ会場に足を運ばないと思われる年齢層。その空気を察して、「キラーズを意識した」ダービーハットをかぶり、笑いを交えたトークを多めに展開していくリリー。とはいえ、歌う曲は内省的なメッセージソングで、自殺志願者との対話「ジェイミー」や、自らのウツ病体験を綴った「バラ」などを、ヴァイオリンを加えたロックバンドを従え、70年代のフォークシンガーのような佇まいで渋い声を振り絞って歌う。頭脳警察のカヴァー「さようなら世界婦人よ」を含め、全4曲と短かったが、一番手の重責を果たす雰囲気たっぷりのステージだった。

 続いてステージに姿を現したのは、昭和の伝説・ピンキーとキラーズ。まずはピンキーこと今陽子が颯爽とステージに登場し、セルジオ・メンデスの「マシュケナダ」を華麗なステップを踏んで歌いだす。声の艶も張りも、まさに絶好調。そしてラテンの味付けを施したビートルズの「デイ・トリッパー」に乗り、オリジナル・メンバーのキラーズが登場すると客席からは盛大な拍手が。最年長・ジョージ浜野は72歳ということで、全員が矍鑠たるとはいかないものの、息の合ったステップとアルトのコーラスが何とも粋でお洒落だ。ヒットメドレーに続いて披露した「涙の季節」はボサノヴァ、特大ヒット「恋の季節」はブルース・ロック調で、音楽性の深さに驚いた若い観客も多かったのではないか。「みなさんがこの歌で幸せになって頂けますように」という言葉とともに、最後は「見上げてごらん夜の星を」でしっとりと、華やかで楽しいステージを締めくくってくれた。

 そして異色の3組が揃ったイベントのトリは、東洋一のサウンドマシーン=クレイジーケンバンド。オープニングSEとアクション、総勢12名が奏でるサウンドの大迫力はいつも通りだが、横山剣の少年時代を綴った自伝的ナンバー「コロ」を歌ったあと、「この曲の背景にはピンキーとキラーズがいるんです」とひとこと。ボサノヴァを得意とするキラーズに合わせてマルコス・ヴァーリの「ブラジルの神」を演奏するなど、今日のメニューは一味違う。心から嬉しそうな、横山剣の姿を見るのが実に楽しい。新曲「山の音」も披露し、後半でおなじみの「香港グランプリ」をやる頃には客席も総立ち。貫禄たっぷりの50分だったが、お楽しみはまだ終わらない。  

アンコールではリリー・フランキーを呼び、リリーがギターを弾く「タイガー&ドラゴン」を。続いて今陽子が登場して、「昭和にワープだ!」という歌詞が胸に沁みる「葉山ツイスト」をノリノリで共演。さらにクレイジーケンバンドのみで「生きる」を歌い、「生涯現役ですよ!」という横山剣の力強い言葉を残して、本日のショーはすべて終了。ジャンルを超えた音楽の素晴らしさと共に、生きていることの素晴らしささえも実感する、濃密な3時間だった。



リリー・フランキー
  1. ジェイミー
  2. フジオ
  3. バラ
  4. さようなら世界婦人よ
CRAZY KEN BAND
  1. 愛の世界
  2. コロ
  3. ブラジルの神
  4. 山の音
  5. デトロイト音頭
  6. California Roll
  7. 香港グランプリ
  8. 横顔

 en1.
 タイガー&ドラゴン 
 w/リリー・フランキー
 en2.
 葉山ツイスト w/今陽子
 en3.
 生きる
ピンキーとキラーズ
  1. マシュケナダ
  2. デイトリッパー
  3. ピンキラヒットメドレー
    七色のしあわせ〜風の季節〜土曜日は一番〜星空のロマンス〜青空に飛び出せ
  4. 涙の季節
  5. 恋の季節
  6. 見上げてごらん夜の星を

text:宮本英夫  photo:堀清英